腹腔鏡手術

腹腔鏡手術について

慈恵医大産婦人科では低侵襲手術チーム(JMIST)を中心に、腹腔鏡手術を施行しております。JMISTでは慈恵医大の鏡視下手術トレーニングプログラムに加え、定期的にカンファレンスやトレーニングを行い、手術の安全性確保とスタッフの技術向上に努めています。
慈恵医大附属病院では、以下のように多くの種類の腹腔鏡手術を施行しておりますので、患者様が希望される術式を選択していただくことが可能です。
手術の時期としましては、初診日から1-2ヵ月以内での手術が可能ですので、手術をお急ぎの方は当院への受診を是非ご検討ください。

卵巣嚢腫に対する腹腔鏡手術

1.多孔式腹腔鏡手術(従来法)

多くの施設で用いられている方法で、臍部(へそ)と下腹部3ヵ所にトロカーを挿入します。当院では臍部に細いトロカー(5mm)を使用するので、臍部の創(きず)はほとんど分かりません※。また、下腹部にはさらに細いトロカー(3mm)を使用することも可能です。

多孔式腹腔鏡手術(従来法)

2.単孔式腹腔鏡手術

①低位単孔式(L-SILS)

慈恵医大オリジナルの手術方法です。恥骨上縁に2-3cmの小切開を施す方法で、術創が恥毛に隠れるため※、非常に美容的な方法です。
また切開創から直接的に手技を施すことも可能であり、従来の多孔式や臍部単孔式では困難な巨大卵巣嚢腫も容易に摘出することができます。

単孔式腹腔鏡手術(従来法)

単孔式腹腔鏡手術(従来法)

単孔式腹腔鏡手術(従来法)

②臍部(へそ)単孔式

臍部に2-3cmの小切開を施す一般的な単孔式手術です。あまり大きくない卵巣嚢腫に施行可能です。

3.Hybrid NOTES

自然腔である腟からトロカーを挿入することで、腹部表面に術創を施さない、より低侵襲な方法です。臍部に細いトロカーを挿入することで、より安全に手術を行うことができます。現在、卵巣嚢腫に対する付属器摘出術、多嚢胞性卵巣症候群に対する卵巣多孔術、卵管留水腫に対する卵管摘出術を対象としています。

子宮筋腫に対する腹腔鏡手術

1.腹腔鏡下子宮全摘出術

多くの施設で施行されている方法で、臍部(へそ)と下腹部3ヵ所にトロカーを挿入します。当院では臍部に細いトロカー(5mm)を使用するので、臍部の創(きず)はほとんど分かりません※。巨大筋腫の場合、臍部トロカーをへそより高い位置に挿入することがあります。

腹腔鏡下子宮全摘出術

2.腹腔鏡下筋腫核出術(LM)

臍部(へそ)と腹部3ヵ所にトロカーを挿入します。当院では臍部に細いトロカー(5mm)を使用するので、臍部の創(きず)はほとんど分かりません※。核出した筋腫を体外に取り出すため、左下腹部の術創を2-3cmほどに延長し、腹腔鏡ではなく直視下で筋腫核を細切しながら安全に取り出します。

腹腔鏡下筋腫核出術(従来法)

腹腔鏡下筋腫核出術(従来法)

腹腔鏡下筋腫核出術(従来法)

3.腹腔鏡補助下筋腫核出術(LAM)

①2孔式LAM

慈恵医大オリジナルの手術方法です。恥骨上縁の3-4cmの横切開と臍部(へそ)トロカーの2ヵ所で行います。前述同様、臍部の創(きず)はほとんど分かりません※。 また、一部の手技を切開創から直接行うので、手術時間を短縮することや出血量を減らすことができます。

2孔式LAM

2孔式LAM

2孔式LAM

②多孔式LAM

恥骨上縁の3-4cmの横切開と、臍部、下腹部の計3ヵ所(場合により4ヵ所)に細いトロカーを挿入して行う方法です。比較的大きな筋腫や多発筋腫でも施行可能です。一部の手技を切開創から直接行うので、手術時間を短縮することや出血量を減らすことができます。
※個人差もございますので、担当医までご相談ください。

腹腔鏡下子宮全摘出術

悪性腫瘍に対する腹腔鏡手術

1.子宮体癌

2014年4月の保険収載と同時に早期子宮体癌に対する腹腔鏡下根治手術を開始しております。当院ではIA期(子宮筋層浸潤が1/2未満)で組織型が類内膜癌(Grade1/2)と考えられる方を対象とし、安全性と根治性を確保するため、婦人科腫瘍専門医/内視鏡技術認定医が手術を担当します。臍部と下腹部の計4ヵ所にトロカーを挿入し、子宮、付属器(卵巣・卵管)、骨盤リンパ節を摘出します。開腹手術に比べ痛みも少なく、術後1週間前後で退院可能です。

2孔式LAM

2孔式LAM

2孔式LAM

2.子宮頸癌

2018年4月より保険収載された腹腔鏡下広汎子宮全摘術も施行しています。早期子宮頸癌(IA2期、IB1期、IIA1期)で腫瘍の大きさが2cm未満の方を対象とし、安全性と根治性を確保するため、婦人科腫瘍専門医/内視鏡技術認定医が手術を担当します。臍部と下腹部3ヵ所、右側腹部の計5ヵ所にトロカーを挿入し、子宮、付属器(卵巣・卵管)、骨盤リンパ節を摘出します。組織型や年齢に応じて卵巣温存も可能です。

2孔式LAM

2孔式LAM

3.卵巣癌・卵管癌・腹膜癌(進行癌)

卵巣癌や卵管癌、腹膜癌は進行した状態(癌性腹水、腹膜播種)で見つかることが多く、初回手術で完全摘出が難しいことがあります。そのような場合、診断目的(組織型や癌の拡がりの確認)で手術を行い、化学療法を施行したうえで根治手術を行います。当院の経験では、診断的腹腔鏡手術は開腹手術に比べ、術後腸閉塞などの合併症も少なく、術後早期から化学療法を開始することが可能です。

その他の腹腔鏡手術

卵巣凍結保存のための卵巣摘出術
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に対するリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)
子宮内膜症
子宮外妊娠
卵管留水腫・留膿腫
多嚢胞性卵巣症候群
その他

ご不明な点等ございましたら、当院ウィメンズクリニックの一般外来(月曜~土曜)または腹腔鏡手術外来(水曜午後)にてご相談ください。

慈恵医大産婦人科 上田 和(JMIST責任者)

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